約 3,654,172 件
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/90.html
以下読んでおくと分かりやすいキャラ設定 『あたし』:駆け出しローグ。本名はカエラ。 姉御:女サムライ。本名はサクハ。 『彼』:ヒーラー。本名はアルフレッド。 副長:ナイト。リーダーに恋する乙女。 ギルマス:メイジ。リーダー:ファイター。姫ちゃん:プリンセス。 ネタバレ:帝竜、ネバンプレス南部担当。 「さあついに来たぞ!帝竜狩りだ!!」 ギルマスのよく通る声が響く。 「てっ帝竜!?」 「マジか!?」 それに応えて副長とリーダーの素っ頓狂な声が飛んだ。 当たり前だ。 あたしもつい最近知ったことだけど、帝竜といえば現在エデンの人類を脅かしているドラゴンを統率する 大陸規模の親玉、その力は時に戦略兵器にも匹敵する圧倒的な脅威なのだ。 「帝竜ってやっぱりあの帝竜ですよね、本気ですかギルマス」 「むしろ正気か?」 「そもそもどこにいるか分かってるんですか?」 「本気も本気、その上正気さ」 次々と上がる疑問の声にギルマスが落ち着き払って答えた。 人間、余りにもさらりと答えられてしまえば二の句が告げないって本当だったんだね。 そうか、と椅子に座りなおすリーダーの呆けた顔が、次第に戦士のものへと変わってくる。 「そうか……本気なんだな」 姉御はといえば、目を向けるとすでに出発の準備を始めていた。流石。 大して多くも無い荷物を手早くまとめながら姉御がギルマスといくつか質問をやり取りする。 「で、勝機はあるんだろうな?」 「もちろんさ」 「誰が行くんだ?編成は?」 「全員出撃、2チームに分かれる。詳しくは後で」 「どういうことだ?まあいい、スケジュールは」 「二時間後に定期船で西大陸の玄関口、港町ゼザに出発。到着後、遠距離移動の準備をして待機。 先方の都合にもよるが明日か明後日にはゼザを出発……」 「先方とは?」 「ああそうそう、これを言ってなかったね。今回は他チームとの合同作戦だ。 ついでにいうと向こうがメインでこちらはサポート的な役割になる」 「ふむ」 「それを先に言ってくださいよ……」 まったく、肝心なことを後回しにする人だ。 メインで帝竜と戦うなんてことになったら、大体のハントマンは遺書を書くってば。 「で、その先方さんってのはどんな人達なんですか?やっぱり強い?」 「聞きたいかい?そうさ、強いも強い、今現在帝竜を倒した唯一の存在、 政府直属の竜殲滅最新鋭にして全世界の希望、新たなる英雄だっ!」 「えっええーーー!?」 「凄い有名人じゃないですか!」 「驚いたな……」 新人ギルドでありながら最初にエデンにやってきた竜を即撃退、三年眠り続けて目覚めるなり 帝竜を倒してカザンを奪還するなど伝説には事欠かない超有名ギルド(といっても他国の民間人にはあんまり 知られてないけど)の名前が出てきたことに全員が多少なりと色めき立つ。 「よくコンタクトできましたね……」 「ってかどうやって話をつけたの?政府から指令をもらってくるような時間は無かったよね」 「なに、皆が頑張ってくれたおかげさ」 「というと?」 「鳥の羽八十枚譲るから少し協力してくれと言われれば、喜んで協力してくれる人もいるってことさ」 あ、鳥の羽、役に立ったんだ。 ふうん。 ………… あたしは冷静に考えて、言った。 「……いや、いないと思いますけど」 「いるんだよ」 ―――――――――――――――――――― (引き続きカエラの日記) 以上、昨日の出来事。 現在あたし達はこの港町ゼザで出発の準備を整えている。 とはいっても本当は今日出発するはずだったんだし、準備なんてとっくに終わってるんだけどね。 それにしても港町っていいな。 暖かい日差し、潮騒の音、おいしい魚。遠くにフロワロが見えなかったら完璧だ。 「皆集まって。明日のスケジュールを確認するよ」 っと、ギルマスが呼んでる。いかなくちゃ。 「明日は日が昇ると共に出発、北上してヨーバー大滑砂を強行突破。更に北上して 帝国領バ=ホにて小休止、先方と合流して今度は南下。目的地に到達後帝竜ジ・アースと決戦となる。 注意して欲しいのはバ=ホは現在竜の領域になっていて、店も宿屋も無いってことだ。 かなりの長丁場になるし、現地のネバン軍も余裕は無いだろうから本当に準備だけはしっかりね」 いくつかの質問をした後は自由行動になる。 その場を離れようとして、ふと姉御と目が合った。 頑張ろうね。 ―――――――――――――――――――― (サクハの日記) サクハって誰?と聞かれれば、私のことだというよりかは無い。 とあるギルドに所属しているハントマン、サムライの高みを目指す未熟の一人だ。 私達は久しぶりの大戦を前に遠出の準備を整えていた。 「……現地のネバン軍も余裕は無いだろうから本当に準備だけはしっかりね」 メイジが色々と注意を出しているが、まあ特に聞き漏らしも無いようだ。 準備も終わったし後はサムライらしく瞑想でも…… そのとき、ふとその場を離れようとしていた妹分と目が合った。 その妹分であるところのカエラから、愛嬌豊かな表情と共にウインクが飛んでくる。 …………ばーすと。 忘れようとしていた記憶が脳裏で爆ぜ、気付いたときには私は全力で逃走していた。 元はといえば、全ての原因はこの手紙だった。 プレロマに立ち寄った際、宿屋の受付を通してカエラから受け取った手紙だ。 わざわざ手紙で何の用だと思い、開封してみて仰天した。 それはその、いわゆる恋文、巷ではラブレターと呼ばれる代物だったのだ。 なんということだろう。 私にはそっちの趣味は無いぞ!? これは一体どういうことだ。 この半年ほどカエラとは共に過ごして、あいつにそのケがあると疑ったことは一度も無かったのに。 私に取れる道は二つ。 A、カエラの未来のためカエラを諭し、諦めさせる。 B、カエラの想いを受け入れ、二人でめくるめく百合の園へ…… ……いやいやちょっと待て落ち着け私!! いくらなんでも話が飛躍しすぎだ。エデンの外まで飛んでいくつもりか? ここは落ち着いて、いくつかの可能性を探りながら今回の事を整理してみよう。 ―――――――――――――――――――― (カエラの日記) 「「あの」」 …… 「あ、先にどうぞ」 「どうも。で、副長」 「はい」 「あれ、役に立った?」 「……すいません、あれって何でしたっけ」 「ああもう、副長に頼まれたラブレターのお手本だってば。受け取ったんでしょ?」 「……あのですね、今私もそのことをお伺いしようと思っていたんですが…… まだ書いてはいただけないのかと」 「へ?」 ……簡単に説明しよう。 恋する乙女であるところの副長は、その生来からの気質だかなんだか知らない煮え切らなさで その憧れの相手であるリーダーとの仲を進展させられずにいた。 それを見かねたあたしとギルマスは副長にラブレター作戦を持ちかけ、ついでにあたしは 何をどう書いたらいいか分からない副長のために入魂のお手本を書きました、まる。 「……それが副長の手に渡ってない?そんなはず無いよ、出発際受付の人は確かに渡したって……」 「そう言われても、現に……どうしちゃったんでしょうか?」 「副長によく似た人がいて渡しちゃったのかなぁ……」 「確かめようにもプレロマは海の向こうですし」 「しょーがないなあ。あたしが見てるから今書いてみる?」 「あ、お願いします」 ……それにしても、ほんとどこ行っちゃったんだろう? あれを受け取った人は今頃どんな顔をしてるのかな。 ―――――――――――――――――――― (サクハの日記) 鬼の形相をしようとしたら目の前に純粋な目で見上げるマスクナッツの仔がいたような顔。 わたしはきっとそんな顔をしているだろうか。 とりあえず現実的な可能性を考えてみよう。 その一、これはカエラからの悪戯である。 一見これはとてもありえることのように思える。しかし考えてみると、カエラはこれまで散々 軽口憎まれ口を叩いてきたものの一度たりとて嘘をついたことは無かった。 それはあいつがギルドに加入して間もない頃つまみ食いしたエビフライのことを正直に言ったときから変わらない。 もちろんそれだけで判断するのはなんだが、とりあえずこの場合は保留とすることにする。 その二、これはカエラからではない。間違えて赤の他人の手紙を持ってきた。 そうだ、そもそも私はこれをカエラから受け取ったわけではないではないか。 とはいえ本人に確かめるのも……おお、筆跡を見ればいい。 ええと、前に書かせたメモと比べて…… 結論。これはカエラが書いたものに間違いなさそうだ。 その三、これは私宛ではない。 なんだかダメ押しの感が強くなってきたがきっと気のせいだろう。 この手紙は一度他人の手を経由している。間違えて私に渡したということもあるだろう、きっとそうだ。 私は手紙を読み返す…… 『貴方は目的もなく、無為に日々を過ごしていた私に新しい……』 『貴方は以前、私の憧れでした。そして今、隣に立ちたいと思う人です……』 『これは貴方のプライドを傷つけるかもしれませんが、それでも言わせてください……』 『私は貴方の盾となり、その傷を半分分けて欲しい……』 『貴方の背中を守れる存在に、私はなりたい』 …… どう見ても私宛て……ですね。 いやいやいや本当に待て! どうしてことごとく私の願うのとは逆方向に話が進むのだ!? いや、 だって、 ありえないだろう!? そりゃ現実としてありえない訳ではなくあって欲しくないだけじゃないかと言われれば否定は出来ない。 だけど、そんな、どうしてそんなことが考えられる!? いや別に考えたくないほど嫌って訳じゃないぞ、そんな訳じゃない。 うん、まあ……カエラならいいかなと思えなくも…… ……何 を 考 え て い る 私 は !! いやほんと冷静になれ自分。 …… そうだ、カエラにはアルフレッドというれっきとした男の恋人がいる! それこそカエラが普通の趣味だという証明ではないか。 ……ああ、自分は何を馬鹿なことできりきり舞いしていたのだろうか。 状況証拠はそうは言っていないがやはりこれは何かの間違いだ、きっと何か見落としていることがあるのだろう。 そうと分かればすっと肩の荷が下りた。悩んでいたのが馬鹿みたいだ。 カエラにこれを見せに行こう、そして二人で笑おう。 うん、それがいい。 それがいい。 「……正直嫉妬しないでもないけど……でも、サクハさんならいいかな」 それが…… ……へ? (カエラの日記) 「でね、とりあえずマンツーマンで完成させることは出来たんだけど」 「気になるのはどっかいっちゃったほうだよね。受け取った人は目を白黒させてるんじゃないかな」 「ほんとにね。今更どうしようもないってのがまた歯がゆくてさ」 「そうだね」 夕暮れの港町を二人で歩くってのはいいもんだよね。 そうでなくたって夕焼けは、心の中のいろいろなものを溶かし出してくれる力がある。 隠し立ての無い心からの語り合いをするならこれ以上のシチュエーションはないと、あたしは思う。 「って、どうしようもないと分かってるんだから考えてちゃ駄目だよね!さ、これから何しよっか!」 「うーん……カエラが行きたい場所が無いなら、芸が無いけど散歩にしようか。 ここは港町だし、いろいろ面白いものがあるよ。うん、案内してあげる!」 「うん……あ、ちょっと待って!」 「?」 「姉御も連れて来ていいかな。最近一緒に遊んだりしてないし、たまには誘おうかなって……」 「あ、うん……いいけど」 「やたっ!」 「……でも」 「うん?」 それまで一緒に笑いあっていた彼の表情が、すっと、真面目なものになった。 「サクハさん、なんだね」 「……え」 「………」 まっすぐにあたしの目を見てくる彼は、一言だけ言ってそのまま口を閉ざし、次の言葉を探している。 「ねえ、もし僕からの誘いと、サクハさんからの誘いと、両方があったら、カエラはどっちを選ぶ? ……ごめん。いまのは卑怯だった。答えなくていいよ」 「……アルフレッド」 「ちょっとね。考えちゃったんだ、僕は君にとって一番になれないのかなって」 「そんなこと」 「分かってる、ちょっと嫉妬しちゃっただけだってば。 これでも男だからさ、やきもち焼いちゃうこともあるんだよ」 うーん。何も言わないでいてくれたから今まで気にしなかったけれど……これは考えなきゃ駄目かな。 よくよく考えてみれば彼には甘えたいときだけ寄っていってそれ以外は見向きもしない わがままな猫のような接し方をしているような気がする。 こんなんじゃ一人前の人間としては……駄目だよね。 「……ふぅ」 日ごろの行いを振り返って深く反省するあたしをよそに彼はひとつ息をついて、言った。 「嫉妬か、そう……正直嫉妬しないでもないけど……でも、サクハさんならいいかな」 「え?」 「あの人は信用できるし……やっぱり君とあの人には特別なつながりがあるもんね。 僕とは別の意味で特別な、逆に言えば僕も違う意味で特別な……そう思えば、 少し悔しいけど……でも、あの人ならいいかなって思えるよ」 「アルフレッ……」 「ふふっ」 そういって彼は笑う。 感激だ。こんなよくわかってくれる人に見入られて、あたしはなんて幸せ者だろう。 「ごめんね。本当にごめん。 分かってくれてるけどそれでも言わせて……どっちも選べないの。 ふたりとも……本当に大切だから」 「うん」 「姉御は世渡りがヘタだから、あたしが守ってあげないと」 「うん、分かってる」 「……ありがと。アルフレッドのことも大好きだからね……」 そしてあたし達は見つめあう。 少しはにかみ、そして自然とふたりの顔が近付いていき…… カランカラン…… ……そしてすっごくいいところで邪魔された。 (サクハの日記) カランカラン…… 落っことした刀の音で、ようやく私は我に返った。 「あ、姉御!?」 と同時にそれは向こうにも気付かれているということだ! 「あ、わ、た、た、た!?」 「カ、カエラ!?今日の夕ご飯に食べたいものあるかなあ!?」 「え!?ああそうだね、なんでもいいかなあ!」 「わ分かった!おいしいもの準備するから楽しみにしててね!」 私も慌てたが先生はもっと慌てたらしく、早口で口実を作るなり真っ赤になって逃げ出してしまった。 「あ……あーあ。もう、こんなタイミングで……姉御?」 後に残された私も混乱に苛まれ、まともな思考が出来ない。 出来れば今すぐ逃げ出してしまいたかったが、私には確かめておかなければならないことがあった。 「あ、あ、あ……」 「姉御?おーい?」 「カ、カカカカエラ!?」 「はい?」 「お前……………二 刀 流 だ っ た の か !?!?」 「……は?えーと……」 (右腰にダガー) (左腰にもダガー) 「え、見て分かりません?」 ―――――――――何たることだ!! ※二刀流(にとうりゅう) ①両手に長短の刀を持って戦う剣術の流儀。 ②甘いものも辛いもの(多くは酒の事を指す)も楽しむ人。 ③男でも女でもイケる人。 「あ……な……」 「?」 「わ、分かった……だからもう少し答えは待ってくれ……」 「え?あの?おーい、姉御ー?」 私は逃げるようにその場を立ち去った。 しかし、なんということだろう。 出口が見えたと思った瞬間にこれだ。 ……そうか……先生も了承済みか…… って、待てよ? 選べないから両方? 私はこれまで、あの手紙が本物ならその言わんとすることは『お姉さまと呼ばせてください』的なことだと思っていた。 しかし、今見聞きしたことを加味してよく考えるとその前提はにわかに崩れる…… 先生が好きで、私も好き。 だから両方。 私を守るとか言ってた。 そういえば恋文を出した後にもかかわらずあの余裕な態度。 二刀流かと聞かれてもなお堂々としていた。 ……これらを踏まえて導き出される結論は。 ワタシノコネコチャンニオナリナサイ? ―――な ん た る こ と だ !!!! (カエラの日記) ネバンプレス帝国南部の山脈。 その岳のひとつであるジョマロン山岳が今、あたしの目の前にある。 これこそが今からあたしが登る山、そして、倒すべき敵だ。 帝竜ジ・アース。 この巨大な山岳に擬態し、ネバンプレス南部をフロワロの海に沈めた元凶である。 「では、ご武運を」 「そっちこそ人数少ないんだから気をつけてね!」 リーダー、副長、姫ちゃんは一足先に山岳の東端、『尻尾』に向けて出発した。 こっちもネバンの偉い人と話していたギルマスを加え、『前足』に向かう。 あたし達はこれから、件の英雄がジ・アースに止めを差すまでの間全力でそれらの動きを食い止めなければならない。 「重要視されているパーツは八つ。その内左後ろ足はネバン軍が止め、右前足と後ろ足は 隣の山岳に埋まっていて参戦不可能。残りのうち危険度の高い2パーツを僕たちが止める」 「ふう……それにしてもさ、今更だけど本当に勝てるのかな? 実際ひとつパーツを止めたんだから倒せるんだろうけどそれだって分からないよ。 この大きさなら普通に暴れるだけでひとつの国を潰せそうなのに、どうしてこんなとこにいるんだろう」 「この大きさだからこそ、さ」 「え?」 疑問を発したあたしに答えてくれたのはギルマスだった。 「物体の質量は一辺の三乗に、断面積は二乗に比例する。 簡単に説明すると、動物が二倍に大きくなるとするとその重さは 幅が二倍、厚さが二倍、長さが二倍で八倍になる。それに比べて筋肉の強さは 幅が二倍、厚さが二倍までは一緒だけど長さが二倍になっても筋肉の強さには関係ないから 四倍になる。つまり動物が大きくなるとその重さほど筋力は増えない、逆に言うと 大きい動物は重さに比べて筋力が無いからそれほど力が出せないということさ。 だから大きい動物が小さい動物と同じように動くためには身体に比べて手足を太くしなければいけないのに、 むしろジ・アースは身体に比べて手足が小さい」 「あ、じゃあ」 「そう。少なくとも生物学上は、帝竜ジ・アースは満足に身動きすら取れない。 人が歩くより早く移動できるかすら怪しいといえる」 「はーー。なるほど。けど……それにしても………」 「歌とネタだけの適当人間かと思ってたら意外と頭がよかったって?」 ……心を読まれた!? あたしの目の前にあった絶壁そのものが宙に浮き、そして落ちてくる。 ジ・アースの前足だ。 それが地面に落下すると同時に、凄まじい衝撃波と岩石の破片が十五メートル離れたここまで飛んできた。 「っくううぅ!!」 この圧倒的な質量にあたし達は苦戦を強いられていた。 前足の動きそのものは遅い。遅すぎるほど遅い。 だけどこれだけ衝撃波を撒き散らされれば、攻撃を避けるとかそんな問題じゃないじゃない! それでもまともに当たったら物理的に即死するほか無い攻撃を避けるため、 あたし達は必死に走り回ってはヒット&アウェイで攻撃し続ける。 「火力が足りない!何とかならない!?」 絶対に直撃を受けない後方で遠距離攻撃を続けるギルマスから声が飛んでくる。 「やってみる!仕込みは終わったから、注意してて!」 姉御にも聞こえるように声を投げ返し、あたしは強襲に向かった。 短剣のスキル、マスクドペイン。 感覚を破壊して苦痛が送られるのを遮断するそれは、そこから更に派生するスキルによって 莫大なダメージを生み出す。 前足の太い神経を狙って突き立てられた三本の剣。あたしのマスクドペインはそこから 脳に送られる感覚だけを遮断しているはずだ。 岩山のような前足を一気に駆け上る。……ここだ! エンドルフィンの分泌を抑え脳のリミッターを働かせなくする神経毒が塗られた剣を抜き放ち、あたしはそこに襲い掛かる。 喰らえ!『トリプルキス』!! ……。 オ オ オ オ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ !!!!!!!! それ事態が地を揺らすような絶叫が『頭』の方から轟く。 無理も無い。苦痛を与えることに特化したこの技は、 手首から先がすりおろされてからすりおろされたことに気付いたような激痛を与えているだろうから。 当然この前足も凄まじい勢いで振り上げられるのに合わせ、あたしは来た道を飛び降りるように下っていった。 そして着地すると同時に離脱する…… !? 足が窪みにはまった!? しまった!この巨体という言葉ですら表せない体が渾身の力で暴れているんだ、 瞬間的に地割れくらい出来ても不思議じゃない!着地寸前に地面にひびが入ったんだ! そして振り返るあたしの目に、 落下してくる巨大な隕石のような前足が見えた。 やばい、このままじゃ死ぬ!! 「させるかああぁぁっ!!」 あたしの横を疾風のように走りぬけ、それに向かって姉御が跳ぶ。 空中でゆっくりと構えを取り、右手を前に……まさか!? 「……壊撃雲身」 その右手がとん、と前足に触れた。 「せやああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」 裂帛の気合と共に、その巨大な前足が何かの冗談のように内側に向けて滑った。 見当違いの方向に落下する前足。 それを見ながら姉御が宙でくるりと回転した。 そしてそのまま、流れるように、目の前を流れる前足の側面に向けて、引き絞り、 「破ッ!!」 一閃。 冗談のオンパレードだ。その前足に、破城槌で打ち抜いたような巨大な亀裂が入った。 「詠唱省略!往け、略奪の魔弾!」 「てやあああっ!」 さらにギルマスが魔法の弾丸で追い討ちし、彼が足の挟まった岩を下から打ち砕いてくれた。 「まったく、あんまり無属性魔法を使わせないでくれよ!」 「カエラ、大丈夫!?」 「大丈夫、ごめんなさい」 向こうから姉御が走ってくる。 「肝心なところでミスるとは、寿命が縮んだぞ!」 「ごめんね、これじゃ姉御を守る日も遠いね」 「う……」 いや、なんでそこで頬を染めて目を逸らすの? よくわからない反応をする姉御を観察するまもなく、ギルマスが指示を飛ばす。 「さあ、ここが勝負どころだ!!今のはピンチも作ったがチャンスも作ってくれた! ジ・アースは今動きが鈍っている、二十五秒時間を作ってくれ! そしたら後は僕が蹴りをつける!!」 「了解!名誉挽回といくよ!」 「ちょ、無理するんじゃないぞ!」 「分かってる!」 「秒単位でもいい、傷を負ったらすぐにこっちに来て!最後までもたせて見せるから!」 あたし達は一気に追撃を開始した。 「熱よ、光よ、わが言の葉に宿れ……」 今度は絶対巻き込まれないように地上で連撃を繰り広げる。 姉御と肩を並べ、もはや近くにあるものを叩き潰すのが精一杯な前足を容赦なく追撃した。 「……我は赤き言葉で詩を編み、詩を紡いで核熱の世界を創らん……」 遠くからギルマスの詠唱の断片が聞こえてくる。 と、前足が最後の力を振り絞って最後の大暴れを開始しようとする。 なめるな! あたしは迎え撃つように特攻した。神経を狙い、動きばなに剣を投げつける! 「おまっ……!」 大暴れに移行しようとした瞬間に感覚を失った前足はその動きを大幅に緩め、 あたし達はその全ての衝撃を潜り抜けた。 「灼け付く空、燃え盛る海!……顕現せよ、地獄の業火!!」 「……たく!今だ!逃げるぞ!」 「合点!」 「わが声に応えて、出でよ!煉獄の創造!!」 一目散に逃走するあたしの背後で、本能的な恐怖を呼び覚ます何かが膨れ上がる。 詠唱を終えたギルマスが手を振りかざした。 「どーん!!」 ――後ろから、恐ろしい音がした。 ギルマスの盾になるように止まる筈だったあたしは、予定より五メートルほど先へ滑り込んで後ろを振り向く。 それは炎が燃えてるなんてもんじゃない、空間全体が一つの巨大な炎で埋め尽くされていた。 吹き荒れる炎の暴風の中心、垂直に噴き出す赤い光の中で(このときのあたしには、スケールがでかすぎて それが突風のように吹き上げる巨大な火柱だということに気付かなかった)ジ・アースの左前足が 見る見るうちに焼け朽ちていっった。 「はあっ……はあっ……お前な、無理するなと」 「ギルマス……どーんはないんじゃ……」「無視か」 「なに、大魔法なんてのは三割のセンスと六割の厨二病と一割のお茶目さで作るもんだよ」 「はあ……しかし、さすが煉獄の創造というべきか、凄まじい威力ですね」 「……ほんとはまだ煉獄の創造とって無いんだけど……」 「へ?」 「え、あ、ああ。……『今のは煉獄の想像ではない、EXヴォルケイノだ』」 「なんですかそれ」 「一度言ってみたかったセリフその二」 「さいですか」 「あーもう、お前って奴は」 そして。 最後に呆れたように、困ったように笑う姉御の顔が妙に印象に残った。 ―――――――――――――――――――― (そして、カエラの日記) あたし達は無事にカザンへ帰ってきた。 ポータルでだ。 サブとはいえ帝竜に打ち勝った功績は、プレロマの偉い人にあたし達の利用価値を見せ付けるには十分だったらしい。 …… そうそう、副長についてだけど。 作戦は失敗したらしい。 『確かに一度倒したんです……倒れたんです。それで、気が抜けて、倒れそうになったところを リーダーが受け止めてくれて一緒に座り込んで……抱きしめられるような形になったんです。 シチュエーションはそうでもないけど、でも、雰囲気的には今しかないと思って、手紙を出して、 そしたら……尻尾が最後の足掻きで……攻撃もしてないのにテイルパリングで…… 手紙だけをきれいに破って息絶えるなんて……あんまりです、ううっ……』 まあ、なんだ。 ドンマイ。 寝付けなくて一階に降りると、そこには姉御の姿があった。 「あれ、姉御も寝れないんですか」 「……ん……カエラか……?」 「姉御……酔っ払ってるの……?」 極めて珍しいことに、姉御は酔っていた。 一升瓶を抱きかかえ、機嫌がいいんだか悪いんだか分からない顔で見上げてくる。 「なに……ひっく、ちょっと考え事をしていただけだ……と」 「それでそんなになる……?悩み事でしょ。相談に乗ってあげようか?」 「むぅ……!」 と、そのとたん姉御は一気に険を濃くしてねめつけてきた。 やっぱり機嫌が悪かったのね……あたしは出来れば矛先がこちらに来ないように祈る。 が、姉御の口から出てきたのは意外な言葉だった。 「ふん……意地悪なこと言って、お前が散々悩ませているくせに……」 「へ?」 「おまえな…… …… 私を守るとか言ってたな?」 「へ?あ、うん、まあ……」 「自分だって未熟のくせに、百年どころか一万光年早いっ……てぇ」 一万光年は距離だよ姉御。 「ま、そりゃそうだけど。でも、それは今の話。あたし強くなるから。 姉御も、皆も……」 「それでおまえがしんだらなんにもならないだろうがあっ!!」 「うひゃっ!?」 「なーにが、つよくなるだっ!?まもれるようにだっ!?きょうだってわたしがいなかったらしんでたろうがっ!!」 「あ、う……」 突然の喝は非常に痛くあたしの耳にしみた。 そうだ、確かに今日だってあたしは調子に乗って死に掛けた。 理想ばかり語って現実には足を引っ張ってばかりとはこのことじゃないだろうか。 辛辣な叱責はあたしの心を重く沈ませた。 「たしかにりそーを追うのはいいさ、だけどな、勇気と無謀はちがうんだぞ? りそうのじぶんになるまえに死んだら、なんにもならないだろーが。わかってるのか?」 「う、うう」 「わたしはな、そんなおまえに、命を危険にさらして守られたってこれっぽっちもうれしくないぞ。 ぜんぜん、まったく、かんぜんにうれしくないぞ……」 「はい……」 「……それで、おまえが死んだら、うれしくない……」 「……ごめんなさい」 あたしは素直に謝った。 せめて心配をかけないようにするのは、あたしの義務だと思ったからだ。 「いいかあ!?わたしは、おまえの思うとおりになんかならないぞ! おまえに守られるなんてまっぴらだ!ましてやおまえの手の中なんかにだれが納まるもんか! わたしはこれからもずっとずっとおまえより強くて、てのとどかないところへいってやるっ!!」 「……は「それでもいいなら……いいよ」 そして。気付くとあたしは姉御に抱きつかれていた。 「え……姉……御?」 「かん違いするなよ……おまえが届かない目標にやっきになって死なれてもこまるから…… だからだからな……しょーがなくだぞ……わたしはまだ思い切れてないんだからな……」 膝立ちで抱きついてくる姉御の顔は下腹部に押し付けられてよく見えない。 いや、そんなことより以前にこの展開はおかしい! 一体姉御は何を言って……? 「あの、姉御?ねえってば」 「うるさい、馬鹿。さそったのはおまえだ……たくさんこまらせて、せきにんとれ……!」 誘った?責任?嫌な予感が膨れ上がる。 そして、嫌な予感は当たるものだって昔から決まっている。 「馬鹿……ばか……手紙なんかで……直接言ってくれたら……ほかにあったかもしれないのに……」 そして、姉御の手に握りつぶされている便箋。 …… ちょっ待っ……それは!? なんてことだ!! 理解してもときすでに遅し、この状況でどうしろと!? 「あの、姉御」 「うるさいうるさいうるさい、馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿!!」 酔いも手伝って、もはや姉御は駄々を捏ねる幼子のように手がつけられない。 ああ、信じてもいない神様。あたしが何か悪いことをしましたか? 現実逃避気味に見上げた満月は、それはとてもきれいだった。 → : 駆け出しローグの日記 ニギリオにて ← :駆け出しローグの日記 プレロマにて
https://w.atwiki.jp/7d2020/pages/97.html
女性M:ゆかな ※以下ネタばれを含みます 女性M:ゆかな 汎用台詞 サムライスキル トリックスタースキル デストロイヤースキル サイキックスキル ハッカースキル 汎用台詞 上へ キャラクター登録時 「あたしを呼んだか?」 勝利時 「わたしはそんなに弱く見えるか?」「厄介なのは勘弁してくれ」「とっとと済まして早く帰ろう」 退却時 「面倒はごめんだよ」 対ドラゴン戦 「しつこいのは嫌いだ」「勤勉な敵ほど疎ましいな」 対帝竜戦 「迷惑の分は返したぞ」「これでやっと帰還できる・・・」 イベント勝利時 「ぎゃんぎゃんうるさいぞ」(首都高戦)「お前の道はここで終わりだ」(人竜戦)「これでゆっくり眠れるな・・・」(真竜戦)「おやすみ・・・タケハヤ」(人類戦士戦) レベルアップ時 「そろそろ他を鍛えたらどうだ?」「へぇ~、悪くは無いな」 パーティー加入 「仕方ないな」 室内 「なんだ?」「ほほう?」(喜)「あたしは・・・」(悲)「照れるじゃないか」(照) 料理 「あたしにやれだと?」→「なんて面倒な・・・」 スカイラウンジ 「あたしを・・・可愛がれっ・・・」 サムライスキル 上へ エグゾースト発動 「ああぁっ!」 通常攻撃 「すりゃっ!」「スッ!」 旋風巻き 「纏めるぞ!」 金翅鳥王旋風 「一度に散れ!」 袈裟斬り 「だるいったら!」 力閂オロシ 「このっ!」→「そのまま倒れろ!」 トンボ斬り 「煩わしい!」 影無し 「終わらせよう」 収刀の紡ぎ 「構えに疲れた」 崩し払い 「このっ!」→「伏せっていろ!」 モミジ討ち 「このっ!」→「貧血気味かぁ?」 フブキ討ち 「このっ!」→「何にもするな!」 不動居 「ゆっくりさせろ」 風林重ね 「引っ張ってくれ」→「うぉおりゃ!」 十六手詰め 「このっ!」→「これっきりだぞ」 抜刀の紡ぎ 「ああ面倒だ!」 修羅の貫付け 「引き返せ!」 刃下のリアクト 「やむなしか・・・」 練気手当 「休ませろ!」 赤化の呼気 「私の機嫌を損ねたな」 黒鋼の呼気 「長期戦は避けたいが」 丹田法の訓 「少しは本気だ」 乱れ散々桜 「特別サービスだ」「せっ」「お前はそこで突っ立っていろ!」「はぁああ!」「でゃああ!」「楽な仕事で羨ましいよ・・・」 トリックスタースキル 上へ エグゾースト発動 「いえぇぇぇっ!」 通常攻撃(ダガー) 「はっ!」「ふん!」 通常攻撃(銃) 「このっ!」「せいっ!」 タランテラ 「休ませてやる」 スコルピオ 「良く効くぞ?」 ヴァンパイア 「味は最悪・・・」 フルムーンヴァンプ 「ああ・・・もう!」→「血が足りないんだよ!」 ベノムアンプリフ 「ああ・・・もう!」→「もう諦めろ・・・」 アサシンアイズ 「いっそ見学したいよ」 ベノムフェティシュ 「素早くまわれ!」 ラッシュショット 「ああ・・・もう!」→「狙うのも煩労だ」 エイミングショット 「ああ・・・もう!」→「この一発で!」 ダンシングバレット 「やぁっ!」→「寄って集るな!」 ジャンプショット 「やぁっ!」→「代わりのお相手だ」 ハイディング 「引っ込んでるぞぉ?」 ブッシュトラップ 「ああ・・・もう!」→「出番を作るな!」 チーターマン 「しまった!・・・飽きてきた」 アサシンズリアクト 「気分が向いたらな・・・」 エスケイプスタンス 「逃げた方が早い」 サプライズハント ボイスなし トリックハンド 「真価を見せよう」 サクリファイス 「先に休ませてもらうぞ」 狂咲きバッドヘヴン 「そぉれッこれが中々重たくてなぁ!」→「大当たり!」→「か弱い私に詫びて死ね・・・」 デストロイヤースキル 上へ 通常攻撃 「とぉっ!」「だぁっ!」 エグゾースト発動 「ふぅぅぅっ!」 正拳突き 「ふぅぅぅっ!」→「一本!」 デストロイチャージ 「次は出るか」 ジャブ 「でやっ!」 ダブルフック 「やるか」→「気だるいなぁ!」 スピネイジブロウ 「ふぅぅぅっ!」→「はしゃぐな!」 釣瓶マッハ 「とぉっ!」「とぉっ!」「まどろっこしいぞ!」 クインテッタ 「やるか」→「でえいっ!」 ドリルクロウラー 「やるか」→「まともに食らえ!」 迎撃スタンス 「面倒だ…来い!」 迎撃スタンス・重式 「わたしを待たせるな!」 オトシ前上等! 「大馬鹿がっ!」 牙折る也 「引き受けよう」 爪砕く也 「さっさと来い!」 吹裂く也 「手を焼かせるな!」 凶転ず也 「嫌な役だ」 怒りの重爆 「ふぅぅぅっ!」→「ドアホぁっ!」 デストロイリアクト 「動かなくもないぞ」 先制デストロイ 「付き合ってられん」 瀕死のド根性 「いざとなればな!」 パリングシールド 「せいぜい死ぬなよ」 スカイハイメテオ 「行ってくるかぁ・・・」「後でたっぷり労えよ」「ふっ・・・ふぅぅぅっ!」「きっちり仕留める!」「めり込め!」 サイキックスキル 上へ 通常攻撃 「しゃっ!」「そこだ!」 エグゾースト時 「はぁぁぁっ!」 フレイム 「これでどうだ!」 イフリートベーン 「はぁぁぁっ!」→「焼き払うぞ!」 ヒートボディ 「勝手に燃えてろ」 フリーズ 「うざったいぞ!」 アイシクルエデン 「はぁぁぁっ!」→「黙って凍れ!」 ゼロ℃ボディ 「ヤワな物でなぁ」 エレキ 「落とすぞ」 ボルトアヴェンジ 「はぁぁぁっ!」→「このじゃじゃ馬が!」 プラズマジェイル 「張り倒せ!」 デコイミラー 「では頼んだぞ」 半径50mの支配者 「楽させてくれ!」 マイクロバースト 「行けるぞ!」→「わたしを恨むな」 マナフローター 「よーく働け」 コンセントレート 「流れ込む…」 キュア 「全く」 リカヴァ 「行けるぞ!」→「始末が悪いな」 リザレクション 「行けるぞ!」→「先に寝るな!」 デッドマンズリアクト 「はぁぁぁっ!」→「くたびれるよ」 魔力の湧水 「面倒だ!」→「たまにはな」 オートリカヴァ 「行けるぞ!」→「一肌脱ぐか」 黒のインヴェイジョン 「さあ出番だぞ」「仇なす者を残さず飲み込め!」「切り裂け!」「あぁ、せいせいしたなぁ」 ハッカースキル 上へ 通常攻撃 「ふっ!」「どぉりゃっ!」 アタックゲイン 「さぁ、適当に張り切ってくれ」 ディフェンスゲイン 「これで多分問題ないさ」 リジェネレーター 「我ながら気が利くなぁ」 119ナノマシン 「たぁぁっ!」→「休んだ分も働くのだ」 Bデータイレイザー 「厄介事を呼び込むなよ」 ファイアブレイク 「火炙りはこりごりだ」 アイスブレイク 「寒いのは堪え難い」 Aスキルコーラー 「たぁぁっ!」→「存分に働いてくれぇ」 ハッキングワン 「捕まえるっ!」 ハッキングゼム 「全員従え!」 マッドストライフ.x 「どっちを見ている?」 スケイプゴート.x 「わたしに尽くせ!」 ロストパワー.x 「面倒だなぁ」 バッドインバリッド 「たぁぁっ!」→「そう力むな」 スリープオール 「たぁぁっ!」→「眠気をわけてやる」 カースオール 「たぁぁっ!」→「あぁ〜恨めしい」 ハッキングリアクト 「たぁぁっ!」→「謝ってくれ」 リアクターチアー 「応援は、しているぞ」 クイックハック 「目を見ろ」 サバゲーナレッジ 「たぁぁっ!」→「小休止だな」 禁断の秘技 「楽に行くとしよう」「これをこうしてこうやってぇ!」「飛べ!」「ざっとこんな所か?」 「イフリートベーン」はたしか「焼き払うぞ」じゃなくて「焼き払うか?」だったような気がする。 -- 名無しさん (2012-04-29 10 48 40) トリックスター -- 名無しさん (2012-05-12 00 15 57) ↑ミス トリックスター エグゾースト発動「いえぇぇぇっ!」、通常攻撃(ダガー)「はっ!」「ふんっ!」、通常攻撃(銃)「このっ!」「せいっ!」、ラッシュショット「ああ…もう!」→「狙うのも煩労だ」 -- 名無しさん (2012-05-12 00 21 02) ↑確認。追加しますた。 さて、これで全部完成…かな? -- 名無しさん (2012-05-14 20 53 41) 大幅に削除されていたので復元。 -- 名無しさん (2013-10-02 21 58 24) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/71.html
とある辺境の地に、小さな国があった。そこでは、ルシェ族と呼ばれる種族は、迫害の対象となっていた。 ゆえに、幼くして差別をうけ、ボロボロの状態だったルシェ族の男の子を、国王が偶然に見つける。 王は、ルシェ族の恋人がいたが、王という立場により、人目につく所では被差別種族の彼女と会う事が出来なかった。 この日も彼女に会う為に裏路地に来た帰りに、男の子を見つけた。 王は、元々差別に対しては反対の考えを持っていた為、こう呼び掛けた。 ―――――君さえよければ、我が城へ来ないか? それが、10年程昔のお話。 「そろそろ着きますよ、姫様」 「・・・うん」 二人の若い男女が、小さな辺境の国へと続く道を進んでいた。 二人ともルシェ族のようで、少年の方は強固な鎧に身をつつみ、少女はいかにも王族、といったような服装だ。 「三ヵ月ぶりですか、あの国へ帰るのは・・・」 「・・・そうだね。」 「王様達は皆、怒るどころじゃ済まないんだろうな・・・。」 「・・・だろうね。」 あの国であったのだろう出来事を思い出していく。 「まぁ、素直に謝罪すれば、王様はお優しい方です、この事も許してくださるはずです。」 「・・・どうかな?」 少女は、王族でありながら、被差別種族のルシェ族だった。貴族達や、城に仕える者達からも、同じルシェである母とともに差別をうけていた。 だが、たった一人、王だけは彼女らのことを良くしてやっていた。 王の手回しにより、護衛の者や、勉学を教える者に、年の近いルシェを遣わせた。 たった一人の味方。たった一人の父―――― 「・・・姫様?」 はっ、と現実に意識を戻した少女。 「さぁ、この門の先ですね。行きましょう。」 甦る記憶、込み上げる思い。 離れていたのはたった三ヵ月だが、感慨深い物がある。 そして、門を開いた瞬間、目に飛び込んで来たものは、 美しい、地獄だった。 「なっ―――!?」 「うそ・・・・」 一面に狂った様に咲き乱れる毒花があった。 「これは・・・ひどすぎる・・・!」 あちこちに血がこびりつき、結晶化した人もあちこちにいる。 「・・・・お父さん!お母さん!」 「!? 姫様!一人では危険です!姫様!」 城へ向かって駆け出した少女は、ためらいもなくフロワロの中へ足を踏み込み、自らを傷つけながらも進んでいく。 お父さん、お母さん、お父さんお母さん、お父さんお母さん―――! 無我夢中で、自分と母の二人で過ごした城の一室へとやってきた。そして扉に手を掛け、開いた先には、結晶と化した母がいた。 「い・・・いやぁぁぁぁぁ!!お母さん、お母さぁん!」 いつも自分の事を一番に考えてくれた、最愛の人の変わり果てた姿に、泣く事しか出来なかった。 良くみると、母はペンを握っている。 そのしたには、手紙らしき物があった。 それを手に取り、読んでみた。 最愛の娘、サンへ 貴女がいなくなってから、もう二ヵ月が経とうとしています。 この国はもう持ちません。竜に襲撃されている様です。 貴女の姉さまは、貴女のおつきの方―――確かコッポラちゃんよね、二人はサンがいなくなってから一週間後位かしらね、貴女達を見つけるまでは帰らない、と言って国を出て行ってしまったの。 今となっては正しい選択だったのね。 私は、何があろうと、いつか貴女達が帰って来るであろうこの城を決しては なれたりはしま せん。 もうあ まり手も 動かなくな ってきたわ、最 後に一 つだけ。 母親らし いことあ んまりしてあ げられな くて、ご めんね。 「うぅ・・・お母さん・・・」 自分へと宛てられた手紙を読んだら、また涙が止まらなくなってしまった。 「おーい、姫様、どこで――あ、いた!」 遅れて来た少年は、泣きじゃくる少女に驚き、理由を聞いた所、無言のまま手紙を渡された。 一通り読んだ後、少女の様子を見るとどうやらあまりよろしくない。 「私も・・・死にたいよ・・・」なんて言っている。 そんな彼女に、こう話し掛けた。 「・・・父様や母様がいなくなってしまったからといって、決して姫様は一人では無いという事を忘れないで。今、姫様は自分も死んでしまいたい、と思っているかも知れませんが、そしたらコッポラさんも・・・ボクも、とても悲しくなります。 貴女には、ボク達が一生ついていますから、死にたい、だなんてこと言わないでくださいよ。お母様やお父様の分まで、生きなければいけないんです。」その言葉を聞いた少女ははっとした表情で少年の方を向いて、 「・・・そうだね、ヒトの言うとおりだ・・・。軽はずみに変な事言って、ごめんなさい。」 分かってくれたのならいいんですよ、と、ヒトと呼ばれた少年は答えた。 姫が、強い心の持ち主であって良かった、と少年はほっとした。 それからほどなくして、かつて小さな国であった地をでて、これからどうするかを考えた。 少しして、サンと呼ばれた少女が言った。 「私・・・お母さんの手紙には、『竜』にやられたって書いてあったのみて、思ったの。竜を倒すって。あの国の様なとこ、増やしちゃいけないって。」 「・・・敵討ちという理由もあるんでしょう?あんまり褒められた事では無いんですが・・・。姫様が決めた事なら、ボクも、全力を尽くさせてもらいます!」 「・・・ありがと、ヒト。」 「!? ・・・お、お礼なんていいですよ!?ボクがやりたい事をやるまでですから!」 ―――こうして、少年達の歩む道は、決まった。 → 仲間たち
https://w.atwiki.jp/dqmj2/pages/46.html
セブンス 飛行船MRG-7の船長 若かりし頃は、モンスターマスターとして バトルGPへの出場を夢見ていた
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/82.html
chapter2 [試練 Trial] 俺たちの潜入しているH国は、人類側にとって重要な脅威となっている国家 だ。少なくともエメル総指揮官はH国を蛇蝎のように嫌っているし、それには それだけの理由もある。 H国を制圧した竜は、自らを人類の解放者であると宣言した。ヘイズという 名のその竜は、他の竜たちと異なりフロワロを撒き散らすこともなく、また自 分に従う人間には寛大な態度を示した。結果、H国では竜と人間の「共棲」が 成立し、ときおり下級の竜が暴走して人間を襲うことこそあれ、H国はヘイズ の統治により平和を維持するどころか、以前よりも発展しつつある。なにしろ 和平派の人間たちは旧国連軍を主体とした人類防衛戦線に加わるよりはH国へ の亡命を志すし、そういった亡命者をH国は拒まなかった。ヘイズはH国の人 間たちに未知の技術を惜しみなく与えており、ついこの前もH国では新技術に 基づいた人工衛星の打ち上げ実験が行われたばかりだ。 竜の中にも宥和派が存在するという事実は、竜と戦う人間たちの士気に確実 な悪影響を与え続けている。現状ではヘイズ以外の竜は人間に対して殲滅戦争 を宣言しているが、本当にこれが未来永劫続くのか、竜との交渉は不可能なの かという疑問を、H国の平和は掻き立て続けた。 エメル総指揮官の方針は簡潔だ。人類の裏切り者であるH国は滅びるべし、 プロパガンダ攻勢で人類の統一的抵抗を破綻させようとするヘイズに死を。 とはいえ、防衛戦線側はH国と戦争をしているわけではない。エメル総指揮 官はそれを強く望んでいるが、そんなことをすればただでさえ権力闘争と民族 間のゴタゴタで揺れ動き続けている防衛戦線は簡単に崩壊するだろう。 「敵は竜」。その一言が、何千年にも渡って共食いを続けてきた人類を、かろ うじて団結させるに至ったのだ。その剣が同じ人間にも向けられるとなれば、 かつて大国に抑圧され続けてきた少数民族・宗教グループは、迷うことなく防 衛戦線を離脱するに違いない――たとえその先に各個撃破と殲滅戦しかなかっ たとしても。 彼らも、同じなのだ。彼らもまた、彼らなりの理想の器を持ち、その器が満 ちることがなかったとしても、悔いることはない。そのことを、エメル総指揮 官は理解できない。 とはいえ、俺個人がH国の方針に対して何を思うかといえば、「胸糞悪い」 以外に言葉はない。あいつらは竜と共棲しているのではなく、ただ単に、竜の おめこぼしに預かっているだけだ。その関係は、支配と被支配でしかない。そ んなものを指して生きているなどと言えるか? 彼らは生きているのではなく、 飼われているのだ。小屋に詰め込まれた鶏のように。これが平和だというなら、 人類が作ってきたありとあらゆる強制収容所は、みな平和だったということに なる。阿呆め。 だが、カガリは迷いを抱いている。彼女はもともとH国の人間で、最初の侵 攻のなかで両親を殺された結果、流れ流れて今の場所にいる。たとえそれが見 せかけの平和であったとしても、かつての同胞たちが安らかに暮らしているの であればそれを無碍にはできないという思いは、彼女の中に確実に存在してい る。祖国の安寧と繁栄が目に見える形で彼女の前に現れているいま、その感慨 が深まっているとしても不思議ではない。 彼女の迷いは、わからなくもない。俺たちが任務を遂行し続ければ、H国は 他国同様にフロワロの咲き誇る荒野に変じるだろう。戦いの中で何十万、何百 万という人間が死に、勝利したとしても復興には百年単位での年月が必要にな る。司令部はH国におけるプロパガンダ戦略によって毎秒0.3人の人的損害が 発生していると計算しているが、目に見えないところで滑り落ちていく砂粒を どんなに思ったところで、目の前で起こるカタストロフを肯定するのは難しい。 ましてやそれが、友もいれば親族もいる土地となれば。 敵の偵察部隊との戦闘は一瞬で終わった。ヴァイスとシュヴァルツは指向性 EMPグレネードの投擲と同時に完璧な待ち伏せを仕掛け、瞬きひとつの時間で4 人を地に這わせる。俺は20メートルを一歩で踏み込み、最初に無線機を背負っ た男を右拳で殴って昏倒させると、その隣に立っていたベレー帽の男――おそ らく指揮官――を左手の理力楯で張り倒す。楯で殴られた男は水平に吹っ飛ぶ と、木の幹に身体を打ちつけて地面に転がった。ちょいとやりすぎたが、死に はしないだろう。 俺が次の一歩を踏み出す前に、ヴァイスとシュヴァルツが残った4人を片付 けた。鮮やかなものだ。得意のナイフを抜かずとも、彼女たちの戦闘能力はま るで侮れない。 カガリが倒れている指揮官に歩み寄り、容態を確認する。彼女はちょっと首 を振ると、目を閉じて精神を集中させた。かざした手がほのかに光る。 「シンラ、やりすぎよ、これ」。手をかざしながら、カガリがぶつぶつと文句 を言う。やっぱりやりすぎだったか。でもほら、死にはしないじゃないか。 「あたしがいなかったら死んでたっていうのは、死ななかったうちにカウント しないでほしいんだけど」 俺の心を見透かしたようにカガリが文句を言う。へいへい。 「接敵情報の漏洩は確認できません。定時連絡用ダミー・プログラムのインス トールを行います。インストール完了。露見まで期待値で98.36分」。淡々と シュヴァルツが事後処理を行っている。 「ヴァイス、カモフラージュコートを射出。ずらかるぞ」 「了解。射出まで3秒、退避を。射出。カモフラージュコート完了しました」 地面に倒れた兵士たちの上に、光学的な迷彩が塗膜されていく。ペイントを 塗りたくるともいう。シュヴァルツは近くの下藪を切り払ってペイントの上に 撒き散らした。原始的だが、こういうのはその程度で十分だ。敵が熱探知して くるような状況ではない。サーモビジョンを搭載した戦闘ヘリで山狩りをし始 めるようなら、そのときはそのとき。 俺たちは駆け足で山道を移動し始める。目的地までは、まだまだ遠い。 俺たちがこんな益体もないピクニックを何週間も続けているのには、当然だ が理由がある。H国は民主制国家だったが、実態は一党独裁と血縁主義による 事実上の封建社会だ。政治の中枢は大統領府だが、大統領を動かしているのは H国を影から支配し続けているフィクサーだ。俺たちはそのフィクサーに直接 面会し、エメル総指揮官とのチャンネルを作るべく派遣された。 フィクサーが住んでいるのは、山奥の一軒屋だ。先方と最低限のコンタクト はできているらしく、目的地までたどりつければ、そこから先はフィクサーの 私兵と戦って血路を切り開くような真似をしなくてもいい、とは言われている。 そこまでの道のりがあまりに遠いというだけで。 その後も何度か偵察部隊や、ときには小規模な攻撃部隊との戦闘になったが、 俺たちはなんとか切り抜けることに成功した。そして、夕闇に沈もうとしてい る瀟洒なコテージを見つけたころには、H国に侵入してから2ヶ月が経過して いた。 「シンラ、まもなく目標地点の哨戒空域です。IFFを発信してください」。 シュヴァルツに促されて、俺は背嚢から小型の通信機のようなものを取りだ し、スイッチを入れた。先方から送られてきたこの機械は、簡単に言えば先方 にとっての敵か味方かを識別するための電波を発するものだ。IFFがオフにな ったまま敷地に入れば、連中は容赦なく最新鋭の攻撃部隊で俺たちを狙ってく るだろう。勝てないとは思わないが、そんな無駄な苦労は御免だ。 「IFF波発信を確認。こちらの通常通信チャンネルに入電あります」 「念のため防壁のレベルを上げろ。防壁が上がり次第、つないでくれ」 「防壁展開完了、つなぎます――ようこそ、人類戦士の諸君。門は開けてある。 車の一台も出してやりたいところだが、時勢を鑑みて失礼させていただくとし よう。そこから門までは直線距離で1キロもないはずだ。お茶を用意しておく」 通信は唐突に切れた。 「直線距離で1キロとか言ったか、今」 「言ったわね……」 「それで、俺たちの目の前には立派な渓谷があるんだが」 「古い衛星写真によると、上流・下流とも5キロ先まで橋はありません」 「わかったよ、久々の空の旅だ。ヴァイス、抑制回路の部分遮断を申請。シュ ヴァルツ、バックアップしてくれ。カガリ、俺の背嚢を頼む。乗り心地はお前ら でなんとか工夫しろ」 「抑制回路の部分遮断を受理。解放まで10秒」 「精神負荷の共有回路をオープン。安定化効率に全体の機能の15%を投入」 「乗り心地ってさあ。じゃあ今回はあたしが背中。それ以外は認めないから。 もう足は絶対にイヤ」 「共有回路を起動中は運動性能が低下しますので」 「あたしが背中」 「飛行途中での落下の危険性が」 「あたしが背中」 「人が集中してるときに、観覧車の座席取りみたいなことで揉めるなお前ら。 カガリが背中、ヴァイスはすまないが足にぶら下がってくれ。シュヴァルツは 俺が抱えてく。オーケー?」 「えええええええじゃあたしが」 「了解しました、ありがとうございますシンラ」 「結局、私はまた足なんですね」 「ねえシンラ、二人を両手で一人ずつ持つとかダメなの?」 「俺の空力特性のこともちょっとは考えてくれ」 「計算によると、効率低下は1.3」 「黙れ。翼部展開するぞ、離れろ」 俺は意識を集中して、自分の内側にいる竜に向き合う。奴らの持つ大きな翼 を頭の中に描き、それが自分の背中にも生えている様子を想像する。ツン、と 鼻の奥が熱くなるのを感じる。大丈夫、暴走には程遠い。 次の瞬間、バサリと音をたてて巨大な羽が俺の背中に生えた。軽く眩暈がす る。シュヴァルツがこめかみに手をあてているのが分かる。彼女は生体通信を 介して俺の精神的負荷を分散させているのだ。たかが翼を生やす程度でこれな のだから、あのタケハヤの負荷を分散処理するアイテルがどれほどの苦痛に耐 えているのか、ちょっと想像ができない。タケハヤがどれほどのものを押さえ 込んでいるかに至っては、想像すらしたくないが。 俺はシュヴァルツを俗に言うお姫様抱っこでかかえこむ。カガリがジト目で 見ているのが分かるが、そういう場合じゃないだろ、お前。俺が軽く姿勢を下 げると、カガリは背中にしがみついた。 「テイクオフ。ヴァイス、カウントしろ」 「了解、テイクオフまで3秒。3、2、1」 ゼロ、の声と同時に俺は両足で地面を蹴ると、翼を大きく羽ばたかせた。ヴ ァイスが人間離れした跳躍力をみせて、俺の両足を掴む。わずかにバランスを 崩したが、2、3回羽ばたくうちに安定を取り戻した。 「くっそ、やっぱり3人は重いぜ」 「前回に比べてシュヴァルツの重量が増加していますので当然かと」 「な、なな、そ、増えたってほど」 「700g強も増量しておいて、太っていないとは言わせません」 「ささささっき多めに水分補給したからであって! 正味534gのはず」 「なんだ、ちゃんと増えてるんじゃん」 「でででででもカガリさんだってそれを言ったらキログラム単位で」 「シンラ、その子だったらここから落としても生きてるわよね?」 俺は無言で飛行速度を上げる。打ちつける気流の激しさに、女どもは一斉に 口を閉じた。女三人集まれば姦しいってのは誰が考えたんだ。 1分ちょっとの空の旅の後、俺たちはコテージの門にたどり着いた。玄関ま で飛んでいくってのもありだが、最低限の礼儀は守ることにしよう。俺たちは 外交使節でもあるんだから。面倒なことこの上ないが。 玄関先で翼を畳んだ俺を、執事らしき男が出迎えた。異形の姿を見ても、取 り乱す風はない。俺が自分たちが防衛戦線の使者であることを改めて告げると、 男は黙って俺たちを邸内に迎え入れた。 コテージは豪華なつくりで、H国の上層部が貯えてきた資産の膨大さをうか がわせる。カネになどほとんど意味のなくなった世界ではあるが、それでもカ ネの威力が通じる部分はまだまだ多い。 俺たちは和室と洋室がつなぎになった、不思議な客間に通された。カガリは 「由緒正しい成金趣味ってやつね」とか呟く。そういうことは、思ったとして も口にだしちゃいけないぜ、カガリ。俺も思ったけど。 しばらく待つと、和室の襖が開いて、フィクサーが姿を現した。生体通信の 秘話回線をオープンする。 『虹彩パターンのスキャン完了。照合。フィクサー本人である確率は86.7%』 『武装は確認できません。本人の身体能力も脅威レベルは無視可能』 『オーケー、この回線を維持しろ。以後圧縮言語を使え』 『アイ・サー』 俺は席を立つと、フィクサーが伸ばした手を取って固く握手を交わし、改め て着席する。 「ようこそ、老いぼれの終の棲家へ。だいたいの話は聞いているよ」 「我々の計算では、この国の体制が維持されることで、毎秒0.3人の死者が発 生していると測定しています。あなた方の平和と安寧は、他の人間の血によっ て購われている。そのことを、どう思われますか」 「悪いが、どうとも思わないな。21世紀生まれの君らは知らんだろうが、儂ら が若いころには、『アフリカでは2秒につき1人の子供が死んでいます』とかい うCMがテレビを賑わしていたよ。毎秒0.5人だ。その悲惨は、先進国の平和と 安寧のために無視され続けた。毎秒0.3人ならば、我々はなかなか大した努力 をしていることにはならんかな?」 「人類の旧弊を支持することが、現在の弊害を擁護することになると?」 「では君たちは旧弊を背負っていないとでも言うつもりかね? 『敵は竜』と は、大いに結構。儂らは『敵は帝国主義者』と習い、次に『敵はファシズムと 民族主義』と習い、その舌の根も乾かぬうちに『敵はアカ』と習ったものだよ。 君たちもまた、人類がかつてそうであったように、敵を敵と認めること以外 では結束できずにいる。君たちのやろうとしていることは、どんなに控えめに 言っても、人殺しに過ぎん。儂らの咎が、人殺しがあたかも存在しないかのよ うに振舞っていることだとすれば、君らは自分たちの手で人を殺して、それを 自由のための戦いと称している」 「我々は竜と戦っています。人ではない」 「ではこの国で竜との戦争を始めるか? その戦争を始めるという決断は、人 殺しをするという決断とどこが違う」 「どんな犠牲を払ってでも、ここで戦わなかったら、人類はいずれ全滅します。 よもやこの国の現状が永久に続くなどとは思っておられますまい」 「永久に続く国家など存在しない。永久に続く種も存在しない。なぜ人類が絶 滅してはいかんのかね? この竜の試練を乗り越えても、人類はいつか必ず滅 びるだろう。生物とはそういうものだ」 「俺は……まだ人類が滅びてほしくない。あなたは、もう滅びても構わないと 思っているのかもしれない。けれど俺たちは、そう思ってはいません」 「ハッ、本音が出たな。君らにしても、結局は人類が犯してきた過ちを繰り返 す烏合の衆の一員に過ぎんということだよ。儂も含めてな。人類はいつだって、 己と『己たち』の主張を信じて、その正しさを認めさせるために殺しあってき たのだ。 よいかね、平和や自由の形は、人の数だけある。だから人はそれぞれの平和 や自由を求めて、殺戮者となる。君もまた、自由を求める殺戮者となるか?」 『シンラ、エメル総指揮官から入電』。シュヴァルツが脳裏に耳打ちをする。 『10秒待ってもらえ』 「もしそれが必要なら、俺は殺戮者になりましょう」 『ダメです、強制オープン――シンラ、こちらエメルだ。新しい任務を発行す る。ただちにその空域を離脱、チームβ4と合流しろ。以後の行動はβ4に従 え。以上――回線遮断されました』 「そうやって愚行を繰り返すのか?」 「では、あなたは愚行を繰り返さないのですか?」 沈黙が落ちた。ヴァイスがエメル総指揮官からの最優先命令を執行しろと煩 く騒ぎ立てるが、彼女にはβ4の動向を調査させることにする。 「賢く生きるのも結構。あなたが仰るように、平和や自由の形は、人の数だけ あるのでしょう。だから、賢く生きる道だって否定はしない。 でも俺は、人間ってのは本質的に愚かなのだと思っています。愚かさを棄て た人間など、人間ではない。この戦争は、人類が体験したあらゆる戦争と異な る戦争です。人間が人間であること、その意味を問われている。ならば俺は、 人間として、愚かでありたい」 「そうして、気合と根性だけを武器に、マシンガンが待ち構える丘の上を目指 すのかね――と、ちょっと失礼する」 気がつくと、執事が電話を持ってフィクサーの横に立っていた。電話ごしに、 なにやらボソボソと討論をしているのが聞こえる。 『シュヴァルツ、通話傍受。唇も読め』 『実行中。通話の傍受はできましたが暗号プロトコルが解読できません』 『なんだと?』 『人類のテクノロジーには、相当する暗号化技術がありません』 『竜の移転技術か。唇を読めるか』 『シンラ、嫌な予感がする』 『非科学的なことを言うな、カガリ。根拠を示してくれ』 『根拠は、あたしのカン。シンラ、今すぐ動いたほうがいいわ。たぶん、もの すごく切羽詰った時間勝負になる』 『ヴァイス、シュヴァルツ、カガリの観測を再計算しろ。最優先だ。急げ』 『読唇結果を報告。防衛戦線に所属する小隊の侵入が確認された模様です』 『β4だ。ヴァイス、β4との通信をオープン』 『自閉モードです。アクティブ反応なし』 『じゃあなぜバレた』 『こちらの自閉モードを感知できる警戒網が完成していると思われます』 『シンラ、急がないと』 『落ち着け、カガリ。β4はそう簡単にやられる連中じゃあない。ヴァイス、 本部に緊急連絡。β4は敵に感知されていることを報告しろ』 『7秒前から実行中。通信途絶。遠距離生体通信にジャミング』 『つながるまで繰り返せ。ただしあくまでカガリの観測の再計算を優先しろ』 『アイ・サー』 「状況が変わったようだ、勇者殿。君との対話は非常に興味深かったが、どう やらこれ以上の話し合いは無駄なようだな」 「……何と?」 「哀れな。君たちは捨て駒ということだよ。我々の哨戒網が、君たちのお仲間 を洋上に発見した。竜反応だけでなく、フロワロシード反応が認められている。 ここから先は儂の推測だが、君たちのお仲間は我が国の寒村にでも上陸して、 そこの住人を皆殺しにし、フロワロを撒き散らすつもりではないのかな」 「馬鹿な。そんなことをしたら……」 「エメルならば、やる。もちろん儂らはことのすべてを衛星から記録させても らうが、そんなものは捏造だと言い張るつもりだろうな。そして、たとえH国 においても竜の脅威は存在すると宣伝する。おおかた、君たちのお仲間は、竜 に変装する力でも持っているのではないのかね?」 『シンラ、β4は擬態化に特化した偵察・特殊工作部隊です。まさか』 『うろたえるな。相手のペースに乗せられてどうする』 「では、あなたはどうされるつもりなのです」 「答える義務はないが、答えよう。何もしない。我々は、君たちが薄汚い工作 をする証拠を手に入れる。君らは、我々の竜との宥和が完全ではない証拠を手 に入れる。状況はイーブンだ。ならば無理に人外の戦士たち相手に戦う必要は ない。こちらにばかり無駄な損耗が積み重なる。 さあ、行きたまえ。君たちがここでできることは何もない。せいぜい、儂を 殺す程度だ。だがエメルのことだ、儂を殺せばこの国がより深く竜に支配され ることくらい分かっている。儂の暗殺命令は出ておらんだろう?」 「ヘイズに通報すれば、俺たちも含めて、侵入したチームは助からないでしょ う。あなたこそ、こんな事態になったのに、なぜ通報しないのです」 「これが儂にとっての自由と平和だからだよ、戦士どの」 「あなたは、この状況に対して『何もしない』と言う。ではもし、今から起こ ろうとしている非道を止める者がいたら、それをどう評価しますか」 「馬鹿だな。長生きできんタイプの馬鹿だ。だが、確かにそういう馬鹿こそが 人類の希望なのかもしれん。君の言うとおりにな」 『ヴァイス、シュヴァルツ、本部およびβ4との連絡タスクを最低レベルに置 け。周辺警戒に全力を投じろ』 『アイ・サー』 『シンラ! いったいどういうつもりなのよ!』 『話は後だ。動くぞ』 「わかりました。彼らの上陸予想地点を教えてください」 「おやおや、君は敵国の人間だ。儂がそんな軍事機密を言えるはずがなかろう。 さあ、帰られよ。楽しいひと時を感謝する。君らの車は裏の駐車場に動かして おいた」 「感謝します」 俺は席を立った。しぶしぶという様子で、カガリも立ち上がる。ヴァイスと シュヴァルツはそもそも着席していない。 『シンラ、説明して。何をどうするつもりなの』 コテージの玄関に歩きながら、カガリが生体通信で俺に訴える。 『初期の任務を続行する。それだけだ。お前のカンは正しかったよ。急がなく てはならない』 『ちょっと、ぜんぜんわけわからないわよ。説明してよ』 『あの老人は、軍事機密は教えられないと言った。だがこの国には軍隊はない。 存在するのは、あくまでも軍事力を持った警察隊だ。だから軍事機密があり得 るとすれば、それはかつて他国の軍隊が駐屯していた場所ということになる』 『だからどうするのよ』 『今からそこに向かってβ4の作戦を阻止する』 『はぁ!?』 『シンラ、それは重大な軍法違反です。承認できません』 『落ち着けよ。俺たちはβ4と合流しろという命令を受けた。それ以前の命令 は、現地のフィクサーとのパイプ作りだ。以前の命令を遂行するにあたって最 も効率がよいのが、β4を撃退することだ』 『しかし以後の行動はβ4に従えと』 『β4との連絡は取れていない』 『承服できません。シンラの議論は、ただの言葉遊びです』 『シンラ……残念だけど、あたしも賛成できない。そりゃあ、この国の人を守 ってくれるのは、嬉しい。あたしも、できるなら、そうしたい。でも、かとい ってそんな……』 『いいか、エメルのプランはそんな単純なものじゃないんだ。β4は間違いな く竜に擬態して作戦を実行する。その作戦が実行されれば、エメルにとってみ ればそれはそれで問題はない。とはいえそのままなら、老人の言うとおり、分 け前は半々だ。 だがもし、H国に侵攻しようとした竜を、たまたま現地にいた防衛戦線の部 隊が撃退したとなったらどうなる? エメルはH国ですら竜の危機に瀕してい るという証拠を手に入れ、さらには防衛戦線の正しさも示すことができる。こ れならば第1世代のチームを2個も投入する理由が分かる』 『……ずいぶん幼稚な自作自演ね。でも彼女ならやる、か』 『し、しかし、その推測には裏づけがありません』 『本部に問い合わせても、本部は絶対にだんまりだ。俺たちが勝手に想像して、 勝手に行動するという状況以外、許されないからだ。自作自演の証拠はできる 限り減らさなくてはいけない。 それに、だ。仮にβ4を俺たちが看過したとして、俺のプランを実行した場 合と、どちらが有効だと思う』 『そ、そ、それは……』 『シンラのプランのほうが論点が整理されています。不確定要素が多すぎて有 効度は計測できませんが、トータルで概算すると戦線への寄与度は高いと判断 します』 珍しくシュヴァルツが曖昧な表現を使う。 『ただし、シンラのプランを採用した場合、我々が軍規違反に問われるのは必 然です。本部に帰投すれば軍籍剥奪のうえ、重罪に処せられるでしょう。かと いって孤立無援での活動は不可能です。それでも実行しますか?』 『孤立無援にはならない。うまくやれば、あの老人が俺たちをサポートしてく れる。防衛戦線とは縁切りになるが』 『シンラ……あなたって、本当に馬鹿。定期的なメンテナンスなしに、あなた は生きていられないのよ? それはあなたが一番よく分かってるはずじゃない。 それに、あなたはエメル総指揮官のプランだなんだとか言ってるけど、要す るに、この汚い工作が気に入らないんでしょ? 罪のない人間を殺してでも政 治的有利を確立しようなんてのは絶対にイヤだってことなんでしょう? でも さ、あなた、そんな意地のために死ぬの? そこまで馬鹿なの? 死んだらも う竜とは戦えないのよ?』 『メンテナンスがなくても、1年くらいならやれる。その間にヘイズを殺せば いい。秘密裏とはいえこの国の中枢部と手を組めるんだ。やってやれなくはな いだろう。ヘイズを叩いた後は、俺に脅迫されて渋々ってことにすれば、エメ ルもお前らを悪くは扱うまい』 『……分かった。あたしは乗る。でも、あなたに脅迫されたからじゃない。あ たしは、あたしの意思で、あなたの作戦に乗るわ。こんな子供じみた謀略で何 の罪もない人たちが死ぬだなんて、あたしには耐えられない。そこまで人間の プライドを虚仮にされたくない』 『馬鹿だな、お前も。ヴァイス、シュヴァルツ、お前たちは拒否していいんだ。 なんとか俺たちだけでもやってみる』 『私たちも討議をしました』 『シンラのプランに賛同します』 『私たちは元来、あらゆる命令に優先して、シンラの命令に従えと言われてい ます。今回のシンラの命令は、危険ですが理不尽ではありません。また最終攻 撃目標がヘイズであるというならば、いっそう従わない理由がありません』 『私たちは、ベストを尽くし、武運を祈るだけです』 『やれやれ、俺たちは阿呆の群れってことか。今さらだが先が危ぶまれるな』 『指揮官が指揮官ですから、やむをえないと考えます』 『遠まわしに馬鹿にされた気分だ』 『かなり直接的に馬鹿にしました。罵倒語辞典のインストールを行うことを推 奨します』 『まったく』 『ねえ、話がまとまったところで質問なんだけど、β4の襲撃にどうやって間 に合わせるの? 空を飛んでも間に合わないと思うんだけど』 『間に合うさ。空を飛べば』 『シンラ単独であれば確実に間に合いますが』 『何で俺一人で行くんだよ。ありえないだろ。ほら、そこにクルマがある。暖 気も済んでるようだな。ヴァイス、シュヴァルツ、操縦を頼む。俺たちはカー ゴに入る』 裏の「駐車場」には、VTOL式の小型輸送機がエンジンを回していた。執事が コクピットから降りてきて、俺たちに一礼する。 5分後、俺たちは亜音速で空を飛んでいた。この速度ならばβ4の移動に間 に合うはずだ。 隣を見ると、カガリが緊張した表情で虚空を睨んでいた。ここから先は、地 獄への片道切符だ。俺は膝を強く握り締めているカガリの手に、自分の手を重 ねる。僅かに、カガリの瞳が緩んだ。俺は躊躇せずにカガリの唇を奪うと、彼 女をたっぷりと味わう。カガリも俺の背中に手を回し、情熱的に接吻に答えた。 1分近く、そうやってお互いの暖かさを確認しあっただろうか。さすがにそ こから先に進むには、状況が状況だ。名残惜しい気持ちはあったが、どちらか らともなく唇を離す。 「……この世の中の命、意志、存在、すべてのものにはちゃんと存在理由があ る。不要なものなぞ存在しない。そう、父親に教わったわ。 あたしは、どうしてもエメル総指揮官の方針に納得できない。彼女にとって、 あたしたちは必要のない存在だって言われてるみたいで。よっぽど竜のほうが 親近感を持てるわ。少なくとも、あいつらはあたしたちを必要としてるんだか ら。餌として、ね。これって、元H国の人間ならではの危険な思想かしら」 「そうでもないさ。最大の問題は、エメルは現場の意識との間にズレがあるこ とを認識できてないってことだ。戦略そのものは、間違ってない。だが戦略を 形にするのは、現場の人間だ」 「信用してるのね、彼女のこと」 「総指揮官だからな。信用しないわけにはいかない」 「信用してるのに、命令に従わないの?」 「あの爺さんの言うとおりさ。平和や自由の形は、人の数だけある。平和と自 由を守りたいと思う気持ちに変わりはない。だからといって、自分の平和と自 由を棄てる奴が、どうして他人の平和と自由を守れるんだ」 カガリは短く笑った。 「あなたって、エルネストみたい」 「誰だそれ」 「ただの独り言――『もしわれわれが空想家のようだといわれるならば、救い がたい理想主義者といわれるならば、できもしないことを考えているといわれ るならば、何千回でも答えよう、そのとおりだ、と』」 「そんな馬鹿がいたのか」 「ええ。じゃあ、アレイダはちょっと眠るわ。ヴァイス、到着予定時刻の15分 前には起こして」 『イエス、メム。良い夢を』 カガリは目を閉じると、すぐに眠りに落ちた。誘眠剤が放出されたのだろう。 しかし、エルネストとやらが誰かは知らないが、似たようなことを考えた奴 がいるというなら、俺もきっとそいつと同じような末路を辿るのだろう。エル ネストの前にも同じような道を辿った奴はいるだろうし、彼もその前例の存在 を薄々知りつつ、己の最期に向かって全力疾走したに違いない。 歴史に学ばない愚者と笑うなら、それもいい。俺にとっては関係のない評価 だ。ただ、俺は最後まで走らねばならない。それ以上でも、以下でもない。そ れが、俺にとって、生きるということなのだから。 → イカルガ chapter3 ← イカルガ chapter1
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/81.html
思いっきりネタバレシリーズです。 斑鳩とななどらのネタかぶせです。 簡単なキャラ紹介を先に。 シンラ:ナイト(男) 男の詳しい外見なんてどーでもいいですよね? カガリ:白ヒーラー(女) 脳内で衣装を黒ワンピに変換してください。 ヴァイス:白ローグ あれはきっと男装の女性 シュヴァルツ:黒ローグ あれはきっと(ry chapter1 [理想 ideal] 「大丈夫……いつかきっと、分かり合える日が来る」 「そして遠い未来へ、命は受け継がれるから……」 俺は汗だくになって跳ね起きる。いつもの夢だ。あの手術を受けてからこの かた、毎晩のように見る、あの夢。分かり合える? 馬鹿馬鹿しい。この戦い は、俺たちと奴らの生存競争だ。人間がいままさに市場へと運ばれていく牛に 憐憫を感じるのは、その牛よりも自分のほうが絶対的に立場が上であり、牛の 運命のすべてを自分が握っていると確信しているからだ。牛と人間の立場が対 等であれば、そこには勝利感と達成感以外には存在し得ない。ましてや、分か り合うなど。 「Activation confirmed. おはようございます、シンラ」 いつもどおり、まるで感情のこもらない「おはようございます」が投げかけ られる。 「いま何時だ、シュヴァルツ?」 「+1762.3、現地における24時間表記では0506です」 「朝か。ヴァイスと、カガリはどうしてる」 「ヴァイスは警戒斥候中。0515帰投予定、現時点での任務成功率は99.76%。 カガリ女史は就寝休養中。ramp指数に基づく戦闘活動効率の規定値を維持す るconscienceの回復まで、期待値で3042.5秒」 「あと2時間は寝かせてやってくれ。それから、コーヒーを頼む」 「了解。睡眠増強剤放出まで5秒。放出完了しました。ついては、提案なので すが」 「分かってるよ」。いつものお説教だ。俺はシュヴァルツから熱い缶コーヒー を受け取りつつ、思わずうんざりした声を出してしまう。 「この2,592,000秒での統計ですが、シンラとカガリ女史が休息前に性交渉を 行うほうが、カガリ女史の回復率に112.6%の向上が見られます。シンラも101.6% の効率向上が確認されました。以上のデータに基づき、operation controlとし て毎休息前3482秒以内での性交渉を推奨します」 寝起きの缶コーヒーを飲んでいた俺は、思わずむせ返った。 「あ、あああアホか。そんなに毎晩毎晩もたねえっつーの」。しかも時間指定 つきかよ。3482秒……1時間弱? いやいやいやいや、違うぞ、何か問題が違 う。こいつらと話してると、どうも感覚が狂う。 「そのようなものなのですか? 平均的な成人男子のデータをもとに計算した のですが」 「あのなあ」。そこで俺は違和感の原因に行き当たった。「まず、何より、だ。 嫁入り前の娘が、性交渉を推奨だの何だの、そんな言葉を淀みなく口にするな っての」 「その指摘と、任務効率との間には、有効な相関が認められな」 「いいから俺の話を聞け。俺のメンタルを管理するのも、お前らの任務のはず だな? 俺は、実際の中身がどうであれ、年端もいかない小娘相手に、スイー ツなシモネタで盛り上がりたくはないんだ。オーケー?」 「了解しました、シンラの言語処理野に効率低下を確認。今後、慎みます」 「遠まわしに馬鹿にされた気分だ」 「いえ、直接馬鹿にしました」 「おま」 「ヴァイスが帰投。0515をもって警戒斥候に出ます。ご武運を」 ツッコミを入れる隙もなく、シュヴァルツが薄明の森へと姿を消す。圧倒的 な質と量を誇る敵ですら、彼らを見つけるのは至難の技だ。俺の目で探して見 つかるはずもない。俺は缶コーヒーの残りを確認しながら、近くの切り株の上 に腰を下ろし、何とはなしにため息をついた。 まったく、タケハヤも同じ思いをしてるんだろうか。あのアイテルって女も、 どこかシュヴァルツやヴァイスに似たところがある。エメル総指揮官とアイテ ルを中心としたチームが造り上げたハイブリッド戦闘生命体なのだから、性格 が似ているのはある程度まで予想できるが。 326 名前:イカルガ[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 23 38 23 ID d47zzsJW 俺たちは、地球に侵攻してきた異星生命体である「竜」との戦いにおける切 り札として生産された、人造兵士だ。とはいっても、ベースはあくまで人間だ し、俺自身、普通の人間として育ってきた記憶はある。偽造記憶である可能性 は否定しないが、そこを疑っても仕方ないだろう。偽だろうが、本物だろうが、 俺の記憶は俺のものだ。人造兵士であろうがなかろうが、俺は俺であるように。 この人造兵士の第一号になったのが、いまや人類戦士の二つ名で呼ばれるよ うになったタケハヤ。彼は竜の遺伝子を体内に取り込むことで、文字通り人間 を超越した。その代償は大きかったが、彼が踏み出した一歩によって、押され っぱなしだった人類は巻き返しを始めている。 俺はタケハヤと同じ、第一世代の人造兵士に相当する。俺にも竜の遺伝子が 投入されているが、タケハヤのような大御所クラスの竜ではない。俺は人類が なし得る限界程度であれば容易に超越できるし、そこらの竜に遅れをとること もあり得ないが、本当にヤバイどころが相手となるとタイマンは到底不可能だ。 だからこそのチームだが。 カガリは、第二世代の人造兵士になる。第一世代での数多くの失敗をもとに 理論化された生産工程によって、彼女らの世代は高い生存率と適応率を見せて いる。身体にかかる負担も低いようで、潜在的には俺よりもタフだ。ただ、微 妙な差とはいえ爆発力に欠ける。 ヴァイスとシュヴァルツは、第三世代――あるいは、完全に新世代の戦闘生 命体だ。第一世代・第二世代で得た教訓をもとに、人間のもつ生物としての弱 点を補うように、野生生物の遺伝子が配合されている。生存率と適合率はきわ めて高く、自己繁殖も可能とあって、戦争が超長期戦になった場合における決 定力として期待されている。 しかしまあ、いくら野生生物の遺伝子を配合したからって、猫耳娘が量産さ れるってのはどういう理屈なんだろうか。お偉さん方は、文化統計的に見て親 しみやすい外見を構築することで、既存の人類種からの忌避反応を低減させる 必要があったとか何とか言っていて、実際に彼・彼女らが登場するプロモ映像 は熱狂的なファンはついている。憑いている、に近いくらいに。 ヴァイスはその手のプロモ映像の収録に参加したこともあるそうで、綺麗に 化粧して水着を着た写真を見せられたことがある。戦車とは男性の性的願望を 具現化した兵器であり、それゆえに陸戦の主力となり得たのだと論じた軍事科 学者が大昔にいたそうだが、してみるとその議論はそこまで完璧には間違って いないということか。アホらしいことこの上ないが、そのアホらしさを大真面目に 追求して大金まで投じてしまえるのがエメル総指揮官の総指揮官たる所以かも しれない。 彼女は、信じられないくらい、既存の価値観や習慣に固執しない。自分は人 間ではないと言わんばかりに。その果断さが、人類の生存を維持してきた。 ともあれ、いずれの世代にしても、普通の人間たちや、あるいはエメル総指 揮官にとってみれば、俺たちは鉄砲玉以上の何かではない。俺たちは、人間で ある以前に、武器なのだ。 けれど俺たちにとってみれば、それはなんら語るべき問題ではない。武器で あろうが何だろうが、俺たちは俺たちの命を生きている。だから、俺たちはた だの武器ではない。武器は死なない。俺たちは死ぬ。死ぬために、俺たちは生 きる。生きねばならない。 もしかしたら、俺たちの戦いは無為に終わるかもしれない。俺たちの夢も、 理想も、中途で破れるかもしれない。だが、それならばそれでいい。理想が実 現されなかったからといって、理想そのものが朽ちるわけではない。俺たちが 死ぬことによって生きる、そのことで、理想は誰かの手に委ねられるだろう。 だから、俺たちに悔いはない。生きている今も。死ぬその寸前にも。 327 名前:イカルガ[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 23 42 07 ID d47zzsJW 「シュヴァルツから入電。敵の偵察部隊を発見したとのこと。現状では0717に コンタクトします。誤差プラスマイナス15%」 「カガリが起きる前に接敵する可能性は?」 「16%強。無視できる数字ではありません。1時間以内の活性化を提案します」 「寝起き悪いんだよなあ、あいつ。仕方ない。最低活動保障のラインで起こし てくれ」 「了解。1726.8秒後、およそ30分で覚醒パルスを発信します」 「シュヴァルツには敵部隊のトレースを続けさせろ。ヴァイス、戻ったすぐで すまないが、もういちど斥候に。他の部隊がいないか、確認を急げ」 「アイ・サー。シンラはどうします?」 「俺は、とりあえずコーヒーを飲み終えることにする」 「了解。では、ご武運を」 ヴァイスが音もなく走り去っていった。俺は手元の缶コーヒーを一息であお ると、タバコを取り出して火をつける。何を悠長なことをと言われそうだが、 チームの一人が動けない状態でバタバタあがいても仕方ない。 黒いシンプルなワンピースに身を包んだカガリは、ハンモックの上で静かな 寝息をたてている。戦場にいるという緊張感は、まったく感じられない。でも それは、俺たち全員に言えることだ。正直、任務を達成して本部に戻り、そこ でマスコミのフラッシュを浴びてマイクを突きつけられるときのほうが、よほ ど緊張する。 俺は半分ずり落ちていた彼女の毛布をかけなおしてやる。30分に満たないと はいえ、少しでもちゃんと眠らせてやったほうがいい。彼女が目覚めたら、野 営を畳んで戦闘の準備を進めねばならない。だがそれまでの間、彼女の寝顔を 見守る時間があってもいいだろう。秒で数えるような時間だとしても。 無意識のうちに、ため息が出た。俺はタバコを地面でもみ消すと、武器の点 検を始めることにする。 装備をひととおり点検して、野営の片付けに手を付け始めた頃、カガリが目 を覚ました。ハンモックの上でしばらく虚ろな目をしていたが、俺が戦闘準備 をしていることに気がつくと、のそりとハンモックから降りる。 「おはよう。だいたい30分くらい前、シュヴァルツが敵の偵察部隊を発見した。 現在もトレース中。ヴァイスは周辺の索敵。ヴァイス、報告を」 「異常ありません。敵偵察部隊は単体での行動であると判断します」 インカムからヴァイスの落ち着いた声が聞こえる。シュヴァルツと違って、 ヴァイスはわりとファジーな報告をよこす。緊急時にはありがたい。 「わかった、シュヴァルツに合流しろ。ランデブーポイントの予測は?」 「46-85です。野営地から23分前後」 「了解、油断するなよ。シュヴァルツ、敵のデータを送ってくれ」 インカムのマイクをオフにする。カガリはまだぼんやりしていた。俺は焚き 火をかき回して、地面に埋まっている缶コーヒーを掘り起こすと、カガリに投 げてよこす。 「ありがと。こんなもの、どこにあったの?」 「ここから30分くらい歩いたところにあるコンビニの自販機で買ってきたそう だ。ヴァイスが手に入れた」 「コンビニ? 自販機? そんなものがまだあるの?」 「ここはそういう場所ってことだ」 カガリはちみちみとコーヒーを啜っている。 「コインを入れて、ボタンを押したら、熱いコーヒーが出てくる。これだって ひとつの理想よね。敵は、やっぱり、人間?」 「多分な」 「イヤになるわ」 カガリは一息でコーヒーの残りを飲み干すと、荷物をまとめ始めた。俺は焚 き火を消し、自分の荷物を背嚢に放り込む。 「敵の装備確認。通常装備の歩兵1個小隊です。対竜装備は確認できず」 インカムからシュヴァルツの声が聞こえる。 「了解、46-85で待ち伏せを仕掛ける。俺たちも移動を開始する。武運を」 「ご武運を」 今日も長い一日になりそうだ。俺たちは背嚢を背負いなおすと、山道を歩き 始めた。 → イカルガ chapter2
https://w.atwiki.jp/halyama6318/pages/90.html
B01-059 カオスドラゴンナイト イラストレーター : 天野英 コスト 1 防御 400 攻撃力[追加ダメージ] 1200 2300 3400 4500 5600 6800 [+1] レアリティ SR 属性闇 タイプドラゴン カード種類モンスターカード進化段階2進化 進化元ダークドラゴンナイト 究極進化素材- 効果タイプ 進化 カード効果進化したとき、あなたのドラゴンタイプのモンスター全てをアクティブにする。 ドロップ 木 光 闇 収録・配布ブースターパック第1弾『旅立ちの刻』収録
https://w.atwiki.jp/cerberus2ch/pages/1456.html
飛行UR イビルバースドラゴン イビルバースドラゴン MAX Lv75 クラスチェンジ可能 性別不明 必要統率 69 HP AT DF TOTAL 初期能力(純正品) 10730 12360 12100 35190 LvMAX時能力(純正品) 純正継承値 + 0 + 0 + 0 スキル ロウ・オブ・カオス味方HP +10%初期 ☆ MAX --- 売却価格 24390マーニ 入手経路 クエストイベント『東方の天魔 前編』『後編』月間報酬 召喚セリフ 図鑑テキストこの世の真の姿は黒き闇。光り輝く生こそが邪なる歪みよ。調律者たる我を招き入れてくれた者達に喜びをもたらそう。貴様等は命という悩める鎖から解き放たれ、今こそ闇の中へと戻れるのだからな。 レアリティ一覧 属性 ランク キャラクター名 Lv 統率 スキル 交換不可期間 飛行 Uレア イビルバースドラゴン 75 69 味方HP +10% 初期 ☆ ~ レジェンド エンガルフヴァントゥルス 85 121 味方HP +15% 初期 ☆ SKレベル 5☆☆☆☆☆ 10★★★★★ 15★★★★★ 20★★★★★ 25★★★★★ 30★★★★★ 35★★★★★ →に近づくほど発動率がUP(効果は変わらない) コメント
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/72.html
「はぁ、くそ、ドジふんじまった・・・!」 ハントマンの集う、カザン共和国へ通じる小道から少し離れた所で、戦いが繰り広げられていた。 戦っている人物は、大きめの刃を持つ剣を巧みに操り、襲いくる魔物の群れに抵抗を続けていた。 だが、武器を弾き飛ばされてしまう。 「もう、駄目か・・・。これじゃ、何の為に隊長達が逃がしてくれたのか、わかんねぇや・・・」 魔物が、その者の首を狙って繰り出した攻撃は、 ―――彼に届くことは無かった。 辺りに響く、硬い物同士がぶつかりあう鈍い音。 「ぐっ・・・。ここはボクが押さえます!貴方は退いて下さい!姫様、この人の事、お任せします!」 「うん、分かった」 いきなり現われた一組の若い男女。良く見ると、少女には獣の様な耳が頭についている。 「!? ルシェ!?いっ・・・」 「怪我してるんだから、無理しないで。今、手当てするから。」 後方で、ルシェの少女は傷付いた剣士に、簡単な治療魔術を施す。 「凄いな・・・もう動ける。サンキューな!」 そう言いつつ、彼は駆け出す。自らの落とした剣へ向かって。 無防備に突っ込んでくる獲物を黙って見過ごす訳は無い、と言わんばかりに、今まで抵抗していた少年から、剣士へと目標を変更したようで、一直線に向かって行く。 「ありゃ、やっぱり都合よくは行かないか。」 迫りくる魔物をどうにかしてやり過ごさなければ、剣を拾うことは出来ない。 魔物が攻撃を繰り出す。だが、剣士は動きを見切り上手く躱す。 その後も二撃、三撃と躱していくが、四撃目を躱した所でバランスを崩してしまう。 「ヤベッ、またピンチ!」 しかし、またしても攻撃は届かない。 「何やってるんですか!?怪我人は下がって下さいよ!」 と、白髪に褐色肌の少年が言った。 「お前もルシェか、今日はよくルシェに会うなぁ。」 の、呑気なこといってないで、武器を拾って戦うか逃げるかして下さいよ! 他人をかばいながら戦うことは、正直厳しいんですから!」 事実、ルシェの少年の構える盾は、魔物によって徐々に押し込まれていく。 「りょーかい。それじゃ、反撃開始だ!」 彼の剣技は鮮やかなもので、一撃一撃にそれなりの威力があった。だが、仕留めきれない。 「くっそー、こいつタフだなー」 「我が騎士、ヒトに命ず」 後方から、少女の声が聞こえた。 「我に仇なす、あれを、討ちなさい」 「Yes.マスター!」 少女の号令とともに持てる力全てを発揮して、魔物にルシェの少年が切りかかる。 そして、そのまま魔物の頭部を捉え、一気に振り抜いた。 深々と入った切り口は完全に脳まで到着し、その組織を破壊している。 「ヒュー、やるなお前!」 「はぁ、疲れた・・・」 「お疲れ様。水、飲む?」 「はい、ありがとうございます。」 彼らは一息つくついでに、軽い会話を交わした。 「いやー、済まないな!助かったよ!」 「本当、ギリギリでした。姫様が気付いて無かったら、間に合いませんでしたよ!」 「うん、何かね、音がしたから。」 「そういやまだ自己紹介してないなー。オレはブラックって言うんだ。君達は?」 「ボクは、ヒトといいます。」 「私は、サン。」 「へぇ、どこから来たんだい?サン姫さまは」 ブラックの問い掛けに、サンの表情が少し沈んでしまう。 それを見たヒトが、代弁した。 「あちらの方の、小さな国から・・・。今は、フロワロに沈んでしまいましたが。」 「!? ちょっとまて!? オレもその国から来たぞ!?」 ブラックの発言に耳を疑った二人。だが、王の名を知っているようなので、嘘では無いらしい。 「まさか・・・、あの噂は本当だったのか・・・」 彼の話によると、町の人々には、サンとサンの母のことは、一切知られていないらしい。 「でも、ときどき聞いたんだ。『王には、けがらわしいルシェの愛人がいる』って・・・。」 その一言が、サンの心にショックを与えてしまい、さらに表情が暗くなる。 「・・・あなた、喧嘩売っているんですか?姫様を傷つけるようなら、容赦無く切ります。」 ヒトが殺気を、ブラックに向けた。 「ま、待てよ!確かにそんな噂は聞いたが、オレはルシェを嫌ってたりなんてして無い!むしろ好きだ!」 はぁ?、とヒトがうろたえる中、ブラックは主張を続ける。 「可愛いよな、ケモミミ。もふもふしてぇー。」 ビクッ、とサンが軽く硬直する。 「という訳で、仲直りしてくれないかなー、なんて・・・」 「・・・うん。許してあげる。」 「マジか!?やったー!」 嬉しそうなブラックをしり目に、ヒトがサンに耳打ちをする。 「・・・良いんですか?許して・・・。」 「悪い人じゃ無さそうだし。」 「・・・そう、ですね。」 この後、彼ら三人はギルドを立ち上げる事になるのは、また別のお話。 ← 旅の始まり
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/56.html
人類は敗れた。勇者たちは倒れ、戦士たちは死んだ。 アイテルは、世界の狭間で最後の時間を待っていた。もうすぐここにも竜の手先がやってきて、彼女を殺すだろう。 だが青い髪をした少女の心に、絶望はなかった。ヒュプノスが滅び、人類とルシェ族が滅ぶ。そうであるからには、いつか竜も滅びる日が来る。 そして竜が不可避なる滅びを内包するのと同様に、自分たちもまた終焉の時を迎えようとしている。早いか、遅いか、それだけの問題。 書架が立ち並ぶ薄暗い通路の向こうから、かつり、かつりと足音が聞こえる。少女にはそれが誰だか分かった。ニアラだ。 真竜の名を冠するニアラ自らがここまで来たということは、つまり、アイテルが地上における最後の生存者だということだろう。 やがて、半ば竜、半ば人間の姿をしたニアラが、暗闇の向こうから姿を現した。 「久しぶりだな、ヒュプノス。ずいぶんとてこずらせてくれたが、そのぶん楽しませてもらった。礼を言おう」 「人間の姿を真似るなんて、趣味が悪いのね、ニアラ」 「彼らは私を大いに楽しませてくれた。最後の一人に至るまで、な。素晴らしい敵にして、最高の餌に、わずかばかりの敬意を払うにやぶさかではない」 「そんな言葉では、私の絶望は引き出せない。絶望には希望が必要だけれど、私の希望は遥か遠い日々の中にしかないのだから」 「所詮ヒュプノスとはそういうつまらん連中よ。人間やルシェのほうが食いでがあった。だが――」 ニアラの口が耳元まで大きく裂ける。鋭い牙が並んだ口が、シュウシュウと音を立てた。笑っているのだ。 「連中の絶望をたらふく食ったら、久々にヒュプノスの絶望も味わってみたくなった」 ニアラが指を鳴らす――ようなそぶりをすると、薄暗がりの奥から一人の男が姿を現した。途端に、それまで無表情だったアイテルの顔が凍りつく。 「勇者様ご一行が持っていた剣を再分解して、そのうちの一人を再構成した。さぞ会いたかっただろうと思ってな」 そこにはタケハヤの姿があった。アイテルが心を捧げた男。そして無限にも近い時間、その側に身を置きながらも、指一本触れることができなかった恋人。 「くく、喜んでいただけたようだな? 安心したまえ、彼の狂気は私の管理下にある。なにしろ私が創ったのだからな!」 「――アイテル。君なんだね? 生きていてくれたんだね? 会いたかった。本当に、本当に会いたかった」 タケハヤがうわごとのように愛の言葉を呟きながら、アイテルに近寄る。アイテルは反射的に一歩退こうとして、その場で動けなくなった。 彼がタケハヤではないことなど分かっている。そしておそらくはここに来るまでに、無数の人間を殺してきたのだろうことも分かっている。でも。でも。 とまどう彼女を前に、タケハヤは困ったような顔をして立ち止まる。 「――アイテル? もしかして、君は――俺の事を、もう愛してはいないのか……? 確かに俺は、君の愛を失うに相応しいことをした。だがそれは――」 青い髪の少女は、激しく首を横に振る。 「アイテル、君のことを愛してる。今度こそ、もう二度と離さない。二人で一緒に、静かに生きよう。これから先、俺の戦いのすべては君のためのものだ」 タケハヤとアイテルは、一歩ぶんの空間を残して向かい合った。互いに、互いの瞳を見つめあう。 アイテルは何度も口を開きかけては閉じ、開きかけては閉じ、その様子をタケハヤは静かに見守り続けた。 アイテルの手が拳を握り、開き 下唇を小さな歯が噛みしめ 何回も何回も深呼吸を繰り返し―― そして そして、アイテルが一歩を前に踏み出し、タケハヤはその身体をしっかりと抱きしめた。 不思議と、彼女の心に絶望はなかった。もう、世界は終わったのだ。その最後の時間に、ほんの僅かな奇跡を祈って、何が悪いのだろう? そう思うと同時に、彼女は自分のささやかな絶望がニアラに食われていることを意識した。 でも、止められなかった。そこには、漠たる幸福感だけがあった。 タケハヤの手が彼女のマントを剥ぎ取り、チュニックのボタンを引きちぎって、ボディスーツのジッパーを性急にひき下ろしたときも、そこに絶望感はなかった。 彼の両手が、あまり発育のよくない胸の上をまさぐり始めると、陶然とした快感が立ち上がってくる。 気がつけばこぶりな乳房の乳首は痛いほど突き立ち、下腹部が傍目にも分かるくらいに熱と潤いを持ち始めた。 タケハヤがズボンを脱ぎ棄てる。人ならぬ力を与えられた彼は、その男性自身もまた戦闘能力に劣らぬ強暴さを見せ付けていた。 彼は青い髪の少女の腰を両手で支えると、淡い翳りの中に自身の巨大な幹をつきたてる。アイテルの両足が爪先立ちになった。まだ完全には準備ができていなかったアイテルは痛みを訴えたが、その声にはたっぷりと甘さが忍んでいる。 目じりにうっすらと涙を浮かべながら呻く少女の口を、タケハヤの唇が塞ぐ。二人は両手を互いの肩にまわし、互いの舌を貪った。唾液の糸が口の端から垂れ、胸元へと滴っていく。 くちづけを交わしたまま、タケハヤは下半身を蠕動させ始めた。身体の深奥を突かれたアイテルは、必死で彼の首にしがみつく。 ピストンは最初からハイピッチで繰り返され、かろうじてつま先でたっているアイテルの両足があっというまに痙攣しはじめる。ボディースーツが一撃ごとにずり落ちていき、やがて彼女の足元に落ちたが、そんなことはどちらの意識にもとどまらなかった。 アイテルはひたすらに身体の中を突き刺され、突き上げられ、捻られ、抉られ続ける。卑猥な音を立てながら体が上下するたびに、言葉にできない快感が彼女を支配していた。 絶頂を極めるどころの騒ぎではない――最初の絶頂は、彼と身体が繋がったその瞬間に、既に訪れていた。全身が燃えるように熱く、どこを触られても頭の中が真っ白のなりそうな快感が走る。 激しい突き上げで乳首が胸板に擦れればそれだけで達し、彼女を抱きしめる強い手が腰から背中に回ればそれだけで達した。 両足は細かく痙攣し続け、タケハヤを抱きしめる両手はガクガクと震えている。太ももには愛液がとめどもなく流れ落ち、ボディスーツをぐっしょりと湿らせていた。 アイテルの瞳が焦点を結ばなくなってしばらくして、タケハヤが思いつめたような表情で天を仰ぐ。腰の動きが激しさを増した。 「――アイテル! おお、アイテル!」 朦朧としていた少女は、愛する男の呼び声に答える。 「タケハヤ……タケハヤ……」 「アイテルっ! アイテル……っ!」 「タケハヤ……」 やがて男は動きを止め、女は唇をわななかせた。 がくり、とタケハヤの膝が崩れる。放心していたアイテルは一緒に床に倒れた。 「……タケ、ハヤ?」 彼は息をしていなかった。 「うそ……うそ、タケハヤ……やだ、やだ、やだああああっ! タケハヤっ!!」 のそりと、大きな人影が動く。 「おやおや、タケハヤ君の命数が尽きたか。やはり死んだ者を無理矢理動かすのには限界があるな」 舌なめずりしながら、ニアラが囁くように言った。アイテルは呆然とした表情のまま、床に倒れた恋人の身体を揺すっている。 「いや、いや、いや、いや、実に美味。ヒュプノスの絶望など、人間のこってりとしたまろみ、ルシェの爽やかな酸味に比べれば萎びたサラダのようだと思っていたが。 いいだろう、アイテル。もうしばらく、私のために生きるがいい。そしてその絶望を私に食わせてみよ。なに、お前が本当に絶望するのは、これからだ」 ニアラの眼が光る。と、どこからともなく、何十人ものタケハヤの姿が現れた。 「エデンを攻略するのに、一人では足りなくてな。そうれこの通り、いくらでも代わりはいる」 青い髪の少女は、呆けたような顔でタケハヤたちを見た。 「アイテル――」 「アイテル、愛しているんだ――」 「アイテル、やっと会えた――」 何十本もの手が、アイテルに伸びる。地面に四つんばいになったアイテルの口には巨大な怒張が突きこまれ、背後からは別のモノが彼女を狩り立てた。乳房を、背中を、尻を、太ももを、たくさんの手が愛撫する。 少女は、無上の快楽に悶えながら、どうして自分は気が狂わないのだろう、どうして絶望が自分を殺してしまわないのだろうと考え、 そして死にたいと思っても死ねないので―― そのうち、アイテルは考えるのをやめた。